過去の学術研修会ー第34回ー

第34回学術研修会講演会事後抄録


講師:佐藤 直志先生
(秋田県湯沢市開業)

「歯周補綴と再生療法」
長期結果・再生外科・根分岐部病変・歯の保存VSインプラント・メインテナンス

平成20年11月16日に歯学部4階講堂にて学術研修会が開催されました。講師は佐藤直志先生(本学4期)です。当日は190名を超える参加者が集まり、大盛況でした。
当日のご講演内容を簡単ではありますが、以下にまとめさせていただきます。

・歯科治療は3つの段階に分けることができる。
1.初期の歯周炎を予防していく段階
2.来院した患者さんを治療していく段階
3.治療した患者さんの良好な状態を保つメインテナンスの段階

・ぺリオの患者において、予防=メインテナンスではない。
これは1996年より世界的にコンセンサスが得られている。
ところが最近、ぺリオの治療を衛生士に任せきりにする傾向がある。
「最小限の治療」を目指すあまりに「必要な治療」を行わないままメインテナンスに移行し、長期的には好ましくない結果となっていることがある。

・歯周組織(Periodontium)は歯の萌出に伴って形成され、適正な咬合機能を営むことによって完成される機能的な器官である。
スケーリングをするだけでは良好な状態を維持することはできない。
治療中もメインテナンス中も炎症のコントロールと咬合のコントロールが同時になされなければならない。

・医療には、生命体を維持する医療とQuality Of Lifeに貢献する医療がある。Quality Of Lifeに貢献する医療は生死に関わりがうすいので患者さん側に多くの主導権がある。そして歯科医療はQuality Of Lifeに深い関わりがある。 ・インプラントは特殊な治療ではない。治療のオプションのひとつである。インプラントのライバルは天然歯である。機能的には天然歯に近いところまでいけるかもしれないが、審美的には天然歯に及ばない。

しかし、カリエスにならないことは天然歯より優れた点である。
そして、少数歯欠損の場合、単独で補綴可能だという利点もある。

・現在ぺリオで予知性がないこと2つ
1.歯間乳頭の完全な再生
2.歯の周囲に垂直的に歯周組織または骨を増大すること

・歯科医側のエンドポイントと患者側のエンドポイントはちがう。
歯周ポケットが浅くなったというのは、歯科医側のエンドポイントである。患者側のエンドポイントは、かめるようになったとか不快感がないとか見た目がきれいになったなどのQuality Of Lifeの実感であり、これが真のエンドポイントである。Quality Of Lifeに貢献するということが大事である。

・ポケット測定は測る人によって1,2mmの誤差があるので、大事なところはドクターが自分でプロービングをするべきである。

・歯周ポケットが前回より2,3mm深くなったら再発という。
歯周治療がうまくいっているということは、アタッチメントレベルが維持または改善されているということが指標となる。

・健康な歯肉溝にキュレットを強く入れただけで0.5mmの歯肉の退縮につながるので注意が必要。 ・Armitage(1997):初期治療後に残った6?7mm以上の歯周ポケットがある場合、将来再発する危険率が約10倍になる。

・深い歯周ポケットの歯肉縁下ルートプレーニングは歯周治療のなかで最も難しい。これを成功させるためには、
1.キュレットをしっかり使う技術をドクターまたは衛生士が持つこと。
2.どこに沈着物があるかを判定する能力を持つこと。
3.豊富な臨床経験
重度な症例を衛生士に任せきりにするのは非常に危険なこと。ドクターと衛生士が一緒にやらなければ成功しない。

・手用のスケーリングのみの場合と超音波スケーラーなどを併用した場合と治療効果は同じであるという報告がある。

・非外科療法後に残ったポケットが7mm以上の深い部位では5年後に52%の確率で歯周病が再発する危険性が高い。8mm だと71%まで危険性があがるという報告がある。

・初期治療後に残ったポケットをそのままにしておくことは非常に危険である。

・Badersten(1990)、Claffey(1990):75%のプラークインデックスで初期治療後に7mm以上の深いポケットがあり、なおかつBOP(プローブによる出血)が認められる場合、5年後に50?70%に歯周病の再発が認められる。

・外科療法と非外科療法について
Serino(2001):重度の歯周病について、外科療法を行った場合とSRPのみを行った場合の13年間の比較研究。結論として、外科療法の方がポケットの減少が認められ、再発の危険性も少なくなった。

・Matuliene(2008):ドイツでも同様の研究結果、治療1年後に残った6mmの歯周ポケットがある場合は11年後に全体の30%が喪失、7mmの場合は60%が喪失。

・いくつかの研究で同じような結論から、治療後に残った6?7mmの深い歯周ポケットは危険であるといえる。

・分岐部病変があると歯の喪失が8年で2倍多いという報告がある。
分岐部には物理的に力が多くかかる。

・垂直性の骨欠損=咬合性外傷ではない。
ただし、一般的に上顎臼歯の近心面、下顎臼歯の遠心面に垂直性骨吸収がある場合は咬合性の原因を疑ってもいい。

・Waehaug(1979):楔状骨欠損と骨縁下ポケットは、すべて歯肉縁下プラークによる炎症病変の結果である。

・咬合調整は不可逆的処置であり削った歯はもどらないので最小限にすべきである。動揺がある場合は炎症を除去する方が先である。

・動揺においてはFremitus(Functional Mobility)機能的な動揺の診査が重要である。咬んで前後左右に動かして動くかどうか、指をあてて動くかどうかを診査する。 ・Pihlstrom(1986):歯根膜腔の拡大とフレミタスが認められる歯では、アタッチメントロスが大きく、また骨支持が少なかった。

・Fleszar(1980):動揺のある歯はアタッチメントレベルの改善が少ない。歯周治療後にアタッチメントレベルを多く改善したい場合には固定などで動揺を少なくしていた方がいい。

・動揺があれば治らないということではない。再生療法をする場合はアタッチメントレベルを改善したいということなので、より動揺を少なくしていた方がいいとはいえる。

・Lindhe(1984):重度の歯周病を治療後、3?6ヶ月おきにメインテナンスを14年継続した場合、歯の喪失は2.3%に抑えられた。再発は0.8%。

・逆にリコールで適切なメインテナンスが行われなければ50?60%再発する可能性が高いという報告がある。

・よく歯を磨かない人(口腔衛生状態の悪い人)には外科をするべきではないのではないか。非外科療法のみで外科処置を行わない方がいいのではないかとも言える。

・重度歯周疾患における長期間の成功のためには
1.失われた歯周支持組織の回復
2.分岐部病変の除去
3.安定した咬合の確立

・歯肉が厚い場合は症状が表側に現れにくく、スケーリングなどの効果も乏しい。

・歯根面と骨壁でなされる角度(Defect Angle)が45度より大きい場合、つまり入り口の広い骨欠損は再生がとても困難になる。臨床的には根面と向き合う骨の距離が3mmを超えると再生が困難になる。

・Prichard(1957)最初にGTRの考え方で再生療法を紹介した。
Intrabony technique:上皮の進行は早く、歯根膜細胞や骨芽細胞の進行は遅い。上皮が先に付着すると骨の再生が少なくなる。歯根面への上皮の付着を遅らせるためにフラップを戻すときに骨欠損を全部覆うのではなく、骨頂のレベルで戻した方が再生効果が高いと報告している。

・最近エムドゲインがもてはやされる傾向があるが、個人的な意見ではGTRとエムドゲインどちらも必要なのではないかと考えている。

・歯根面を徹底的にきれいにすることが基本で、それをしっかりやることが一番大切である。再生療法はそれができてからのことである。

・Cortellini&Tonetti(2004):GTRを行った175人の10年後の歯の生存率96.3% これはインプラントより高い数値である。
喪失の6歯は喫煙者。やはりヘビースモーカーは成績が悪い。

・アメリカには長期ケースが少なく、長期ケースの報告はほとんどがヨーロッパである。

・初期治療後7,8mmのポケットがあるときは再生療法を考えてもいい。

・GTRもエムドゲインも報告をみると成績は同じ。ケースセレクションのみに注意すればいい。ただし、エムドゲインはまだ論文が少ない。

・歯肉が厚く、入り口が広い場合はGTRを考えるべきかもしれない。

・エムドゲインは期待できるが、入り口が広く深いケースには難しい。

・歯肉が薄い場合はエムドゲインがベターかもしれない。

秋田県湯沢市で開業して25年あまり、開業当時から通院している患者さんの写真を見ては、もっと前にしておきたかった治療を考え、今も反省の毎日とのことです。謙虚で妥協を許さないその姿勢が長期的な治療の成功を支えているのだと思いました。

(学術研修部会 21期 古町瑞郎)







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