過去の学術研修会ー第40回ー

第40回学術研修会講演会事後抄録


講師:中居 賢司先生
(岩手医科大学歯学部
 歯科内科学分野教授)

有病者の歯科診療に必要な内科疾患診療の最新の進歩

はじめに
 2007年「国民衛生の動向」による人口動態統計では、疾病構造は大きく変化してきている。悪性新生物、心疾患、脳血管疾患が半数を占め、生活習慣の欧米化による動脈硬化性を基盤とする疾患(心筋梗塞症、脳血管疾患、死的不整脈など)が増加している。心臓疾患や脳血管疾患など循環器領域でも新たな抗凝固療法や抗血小板療法、冠動脈ステント、致死的不整脈例や心不全例への植込み型電子機器など治療法が導入されている。また、感染性心内膜炎に及ぼす口腔内手技の影響、脳血管疾患や急性冠症候群や切迫流産に及ぼす歯周病の最近の知見をみると、口腔領域と全身疾患の関連はより重要となりつつあり。基礎医学研究でも分子生物学や再生医療を主体とする生命科学研究にシフトしており、多くの研究は「歯学」といった枠組にとどまらない。今後、医・歯学部の共通カリキュラム、医科・歯科連携による患者中心の全人医療の構築など、パラダイムシフトが望まれる。

 本研修会での講演内容を以下に概説する。
I.  有病者の歯科診療に必要な内科疾患診療の最新の進歩。
1.歯科診療時の内科救急ーアテローム性冠動脈疾患、致死的不整脈、重症心不全 
 アテローム性冠動脈硬化症治療の基本は、生活習慣病(高血圧症、高脂質血症、糖尿病、肥満)の改善にある。中世のサレルノ養生訓は、現代にも通じる生活習慣での戒めである。気苦労を背負い込まない、烈火のごとく怒るな、ワインの痛飲は止め、晩餐は軽くとりなさい。三つの習慣があなたの医師代わりとなると書かれてある(サレルノ養生訓 11世紀)。  近年、冠動脈疾患の侵襲的治療として、カテーテルを用いた薬物溶出性ステント(DES)が用いられている(Fig 1)。冠動脈疾患インターベンション治療ガイドライン1)では、DES症例にアセチルサリチル酸(アスピリン)とADP(アデノシン二リン酸)受容体が誘導する血小板凝集を特異的に抑制するチエノピリジン系薬剤(プラビックス)の併用が推奨されており、歯科治療の止血際には難渋することも想定される。
 米国での院外での心臓突然死は年間約25万人、日本での心臓突然死は約5万人と報告されている。心臓突然死の多くは、アテローム性冠動脈硬化症(Fig 2)に伴う心筋梗塞、心不全、高血圧症、弁膜症などの心疾患が基盤にある。``心臓突然死``遭遇時の心電図として心室細動が約7割を占める。心室細動は、除細動により洞調律への復帰、救命が可能である。典型的な心電図をFig 3に示す。心筋梗塞症はアテローム硬化性脳梗塞と異なり、致命的な運動機能障害を残すことは少なく、就業も可能である。体外式自動除細動器(AED)が威力を発揮することはいうまでもなく、医療機関や公共施設での設置は必須である。
 心肺停止や心室細動より救命された患者で、明らかな致死的不整脈の再発が予想される患者では、植込み型除細動器(ICD)(Fig 4)の適応が不整脈の非薬物治療ガイドライ2)からも推奨されている。また、心室内伝導障害を有する重症心不全患者では、両心室ペースメーカによる心臓再同期療法(Cardiac Resynchronization Therapy: CRT)が行われている。これらの植込み型電子機器の装着は、年間数千件にも達しており、歯科医療機関受診も増加しつつあり。これら埋め込み型電子機器症例での、レーザーメス、電気的根管長測定器・歯髄診断器、超音波発生装置の使用は、原則、禁忌である。今後、埋込み型電子機器の装着例での歯科診療機器の安全性に関するガイドラインの確立は急務である。

2. ラクナ梗塞、アテローム血栓性脳梗塞と抗血小板療法
 一般的に、ラクナ梗塞は脳内の細い動脈の閉塞、アテローム性血栓性脳梗塞は頸動脈などの太い血管の閉塞である(Fig 5)。近年、高コレステロールや糖尿病の増加に伴い、アテローム血栓性脳梗塞は増加してきている。医師・歯科医師にとっても、脳血管疾患(脳梗塞、脳出血)は日常診療の遂行に支障をきたす疾患であることは言うまでもない。アテローム血栓性脳梗塞の初期には視野異常、言語障害、運動障害や平衡障害などの―性脳虚血発作(TIA)の症状が見られることも少なくない。近年の脳血管領域でのCT、MR、血管エコー図による医療機器の進歩は目覚しく、頸動脈硬化や脳動脈瘤などの血管病変や無症候性脳梗塞の診断は正確になされる。しかし、``医師・歯科医師には、``不養生`` ``偏見``が稀ではなく、一般患者のように直ちに病院を受診しないため初期のゴールデンタイムを見過ごすことも少なくない。ちなみに、脳梗塞症の急性期治療として、発症早期にはリコンビナント・プラスミノーゲン・アクチべーター(rt-PA)が有効な例も報告されている。治療効果は、発症から治療開始までの数時間が鍵を握っているといっても過言ではない。アテローム性血栓性脳梗塞診療ガイドライン3)では、冠動脈疾患DES症例と同様にアスピリンとチエノピリジン系薬剤(プラビックス)の併用が推奨されており、歯科治療の際には留意を要する。

3. 心房細動による抗凝固療法
 高齢化に伴い心房細動は増加している。心房細動は血栓塞栓性脳梗塞の代表例である。心臓弁膜症の患者や心房細動例では、ワルファリンを中心とする抗凝固療法が主体となる。ワルファリンの開発は、1920年代にカナダで発見された牛のスイートクローバー病に端を発する。血液凝固因子うちビタミンK依存性の第Ⅱ因子(プロトロンビン)、第Ⅶ因子、第Ⅸ因子、第Ⅹ因子の合成抑制により、プロトロンビンの活性低下(PT-INR延長)をきたす。抗凝固療法ガイドラインでは、多くの場合、PT-INR値``2``を目標としてワルファリン投与が推奨されている。ワルファリンの薬剤代謝には個人差があり、遺伝的因子の解析に伴う個別化医療が導入されつつある4)。ワルファリン休薬100回につき1回の割合で血栓塞栓症が発症することより、抗凝固療法ガイドライン5)ではPT-INR 2~4であればワルファリン継続化に抜歯や小手術を行うことが推奨されている(レベルIIa)。現在、新しい抗凝固薬として抗トロンビン薬ープラザキサ(一般名ダビガトラン)が臨床導入されているが、抗凝固能モニター検査が確立されてなく、今後、歯科治療でも問題となる。

4.口腔内治療と感染性心内膜炎予防ガイドライン
  感染性心内膜炎は、発熱、有痛性のオスラー結節、頭蓋内出血などによる運動障害、難治性の心不全をきたし、外科的治療が必要となる心疾患である。多くの観血的歯科治療手技は、緑色連鎖球菌、黄色ブドウ球菌による感染性心内膜炎の誘因となり得る。感染性心内膜炎予防に関しては多々議論はあるものの、人工弁装着例、チアノーゼを有する先天性心疾患(ファロー四徴症など)では、原因菌(緑色連鎖球菌・ブドウ球菌)に感受性のあるペニシリン系抗生物質の使用が推奨されている(JACC 2008; 52:676-685 ー Class IIa)6)。

6.高血圧症と降圧剤の進歩
 日本高血圧学会では、起床後1時間以内(排尿後、服薬前、朝食前の安静時)と就床前の安静時の家庭内血圧測定を推奨している。家庭血圧が125/75 mmHg未満であれば正常血圧とし、135/85 mmHg以上であれば治療の対象としている。高血圧症の治療の目的は、脳血管疾患、心不全、慢性腎臓病(CKD)、大動脈疾患、高血圧性網膜症などの臓器障害・心血管病の予防である。現在、個々の症例の臓器障害予防目的に合わせて、種々の降圧薬の組合せが提唱されている(Fig 6)7)。

7.糖尿病性腎症と腎透析例の問題点
 糖尿病は大血管障害(心臓、脳血管、腎臓)の重要なリスクの1つであるこ。世界共通の課題として、大血管障害を減少させるための適切な血糖管理とスクリーニング法が推進されている。HbA1cの国際標準化と診断基準への取り入れと食後高血糖の管理が提唱されている。近年の大規模臨床研究で厳格な血糖管理による大血管障害や死亡率の低下は実証されておらず、今後の課題である。8) 2008年末の調査で日本の透析人口は283,421人で、透析導入症例の原疾患の43.3%は糖尿病性腎症である。また、腎透析では、活性型ビタミンD低下による骨そしょう症、冠動脈硬化疾患の合併などがあり、歯科治療で難渋する疾患の1つである。

II.高分解能心電計(DREAM-ECG)の開発の経緯
 われわれの最新の研究成果について紹介する。1903年、Einthovenが開発した心電計の原理は、弦線(銀線)を用いた検流計である。本来、心臓内の電気的現象は、細胞内でのイオンチャンネルの活動に基づく``電流``の変化を反映している。標準12誘導心電図では、心電図QTS-TベクトルおよびST-Tの経時的変化より、経験的に''逆問題``として心筋虚血や心筋傷害(梗塞)を診断している。われわれは、Frankのvector-projection theoryを基盤として、新たにベクトル合成187ch高増幅・高分解能の多機能解析心電計(187ch DREAM-ECG)を開発した。187ch DREAM-ECGでは、心拍変動解析、心室再分極機能図(RTc dispersion map)、高周波微小電位(心室遅延電位)の空間分布の解析が可能である(Fig 7)。187ch DREAM-ECGによる臨床応用として、梗塞心筋、睡眠時無呼吸のスクリーニング、化学療法による心筋障害、致死的不整脈のリスクやQT延長例での薬物有効性の評価が可能である。8,9)

終わりに
少子・高齢化社会を迎えて疾病構造は変化しつつあり、医科の診断・治療技術の進歩は目覚ましい。岩手医科大学が医・歯・薬学の医系総合大学を目指す折、診療・研究ともに医学―歯学の連携は重要な課題である。本日、歯学部同窓会学術研修会で「歯科診療に必要な循環器疾患診療の最新の進歩」について講演する機会を与えられたことに感謝申し上げる。

参考文献
1. 冠動脈疾患におけるインテーベンション治療の適応ガイドライン
 http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2000_fujiwara_d.pdf
2. 不整脈の非薬物治療ガイドライ
 http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2006_kasanuki_d.pdf
3. 脳卒中治療ガイドライン
 http://www.jsts.gr.jp/jss08.html
4. Miyagata Y , Nakai K , Sugiyama Y. Clinical Significance of Combined CYP2C9 and VKORC1 Genotypes in Japanese Patients Requiring Warfarin. Int Hear J 52:44-9, 2011
5. 循環器疾患における抗凝固・抗血小板療法に関するガイドライン
 http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2004_kasanuki_h.pdf
6. 感染性心内膜炎ガイドライン
 http://content.onlinejacc.org/cgi/content/full/j.jacc.2008.05.008v1
7.高血圧治療ガイドライン (日本高血圧学会)
 http://www.jhf.or.jp/a&s_info/guideline/kouketuatu.html
8.科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン 
 日本糖尿病学会編:改訂第2版.南江堂.東京.2007
9. Nakai K, et al. Int Heart J 2007; 48:701-13.
 http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18160762
9. Nakai K, et al. Int Heart J 2008; 49:153-64.
 http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18160762

Figure
Fig 1.


Fig 2. アテローム性冠動脈病変と急性冠症候群の病態


Fig 3. 覚えておきたい心電図と脈拍・血圧の関係


Fig 4. 植込み型除細動器


Fig 5.ラクナ梗塞とアテローム血栓性脳梗塞(Stroke 21:673-676, 1990より引用)

Fig 6.高血圧治療ガイドライン (日本高血圧学会)


Fig 7. 高分解能心電計(DREAM-ECG)







>>過去の学術研修会リストへ



講師:成石 浩司先生
(岩手医科大学歯学部
 口腔機能保存学講座
 歯内療法学分野准教授)

歯内・歯周疾患を"科学"する

1. 歯周病って、どんな病気?
2. 大学人として、"歯周病"に挑む!
3. 広めよう! ペリオドンタル・メディシン
4. 歯内療法 -西と東-

 忘れもしない3月11日の東日本大震災の爪痕が残る折にもかかわらず、第40回岩手医科大学歯学部同窓会学術研修会にご参集いただきました皆様方、そして関係の先生方に、まずは御礼申し上げます。

歯内・歯周疾患は、その治療法に大きな相違があるため、歯科医療従事者の間でも、これらは異なったカテゴリーの学問であるという認識があります。しかしながら、これらの疾患はともに感染・免疫疾患であり、その病巣には様々な炎症性サイトカインが複雑にネットワークを形成し多様な病態を呈しています。感染症の治療の本質は感染源の除去(原因除去療法)にあり、その意味で、我々は、「歯周疾患は歯周ポケット内を"掻爬"し、歯内疾患では根管内を"掻爬"する」という機械的感染源の除去の重要性を教育してきました。その結果、歯内・歯周疾患の治療効果は、"薬剤に頼るのではなく、機械的に感染源が除去できた後は、生体の防御反応・再生力に委ねるのが好ましい"という臨床コンセプトが確立されました。とりわけ、この教育概念は西日本の歯学部で「学問」として脈々と受け継がれているもので、私自身、この考え方が本学の校風の中で受け入れられるかどうか、未だ確信を得るものではありません。今後、双方の活発な議論が望まれる部分だろうと思います。

 古くから歯科医学の世界では、歯周病患者の歯周病原細菌に対する血中IgG抗体レベルが上昇することが知られ、この基本原理に基づいて、新たな歯周病の血液検査法の確立が模索されてきました。しかし歯科臨床の現場では、未だその成果は実を結んでおりません。このことは、従来、提唱されてきた歯周病の血液検査の臨床的問題点を考慮しながらも、新たなコンセプトによる臨床応用を目指す発想の転換が必要であることを感じさせます。また、最近では慢性で微弱な感染症である歯内・歯周疾患が全身疾患の病態に相互に関連する可能性が指摘されるようになり、歯周内科(Periodontal Medicine)という学問が体系化されつつあります。このように歯内・歯周疾患の領域では、多くの研究者が、日夜、真剣に真摯に"真実"を捉えるために邁進し、世界の歯科医療のあり方を変えるために弛まぬ努力を行っています。平成19年には「健康国家への挑戦」と題して、今後の10年にわたる日本の健康戦略の指標となる政府の「新健康フロンティア戦略」がまとめられ、その柱の一つに「歯の健康」が組み入れられました。この指針では、とりわけ生活習慣病と歯周疾患の関連など、歯・口腔の健康と全身との関連性が注目され、歯科医師は「口腔の健康を守ることで全身の健康を守る」という新たな理念をもち、日々の歯科臨床に従事することが望まれています。

 今回、これまでに私なりのアプローチで解明してきた歯内・歯周疾患の病理を概説して、局所-全身の相互作用に踏み込んだ病気のとらえ方を基礎・臨床の両面からお話させていただきました。おそらくは、これまでに学んできた考え方とは違った切り口の講演内容に戸惑いを感じられたものと推察しますが、ご参集いただいた先生方、皆さま方には今一度、「学問」としての歯科医療学についてご議論される一提案として、ご理解いただければ幸いです。

 何かご不明な点がございましたら、いつでも下記のメールアドレスまでお尋ね下さい。最後に、岩手医科大学歯学部同窓会の益々のご発展を心より祈念いたしまして、本学術研修会の「後書き」として締めくくらせていただきます。

連絡先:成石浩司 (naruishi@iwate-med.ac.jp)





>>過去の学術研修会リストへ


ランチョンセミナー



講師:八重柏 隆先生
(岩手医科大学歯学部
 口腔機能保存学講座
 歯周病学分野准教授)

うまくいってますか?歯周治療

 歯周治療は現在、様々な観点から注目を浴びており、日増しに重要視されております。歯周病は全身疾患との関連から、細菌の供給源として、あるいは炎症性サイトカインなどを通して種々の臓器に影響を及ぼす可能性のある慢性炎症としてとらえられており、糖尿病,冠状動脈心疾患など多数の全身疾患と関連することから、Periodontal Medicine(歯周医学)という概念が広く浸透し、医科との連携を深めることが欠かせない状況となっています。

 また来院する歯周病患者さんは実に多彩です。軽度例では、歯周基本治療でほぼ全快し、そのまま定期管理に移行可能ですが、中等度から重度の歯周炎症例では、そう簡単にはいきません。手をつけるべきか否か?PCRレベルは本当に変えられるのか?最終的にどの歯を抜歯し、どの歯に抜髄処置や歯周外科を施すべきなのか?治療期間はどれほどかかるのか?4mm以上の歯周ポケットが存在しても本当に症状発現することなく維持管理できるのか?と迷うことは少なくありません。

 歯周炎により多数の歯が欠損し、垂直的顎位が失われた患者さんにとって、インプラントは残存歯の負担軽減に極めて有効です。米国では、長期保存が困難な歯周病罹患歯は積極的に抜歯し、インプラントによる咬合回復を行うのが一般的です。そしてインプラント治療に際し、口腔内の歯周病原菌(歯周病罹患歯)を可能な限り排除しておくことがインプラント周囲炎発症のリスク回避の必要条件となっております。歯周病を有する患者のインプラント治療の指針では、適切な歯周基本治療が完了して歯周外科処置の後(口腔機能回復治療)に、インプラントを実施することが原則とされています。しかし、大学を受診するトラブル例の大部分は、その指針が十分に活かされているとは言えません。

 日本歯周病学会は「歯周病の診断と治療の指針2007」を平成19年に発刊し、翌年には、より分かり易いフローチャートを多用した「歯周病の検査・診断・治療計画の指針2008」を刊行しました。この指針は「うまくいってますか?歯周治療」の問いに対する適切な回答が示されていると思います。また歯周治療の指針のみならず、歯周炎患者のインプラント治療(2008年)や糖尿病を有する患者さんの歯周治療(2008年)、歯周病患者における抗菌療法(2010年)についても別に指針が示されており、とても参考になりますので、是非、歯周病学会のホームページから(無料)ダウンロードされて参考にしていただきたいと思います。

 中等度~重度歯周炎患者さんを前にして、最初に確認しておくべきは全体の治療計画です。これまでの歯周病の治療計画にはなかった概念として、メインテナンスとSPTの違いを十分に把握する必要があります。区別するポイントの一つはプロービングデプス(4mm以上の部位の分布)であり、もう一つはプロービング時の出血(Bleeding on probing, BOP)です。歯周病患者のそれらデータを正確に把握・記録するとともに、具体的な対策・処置を講じることが重要です。歯周治療継続の前提条件として、PCRレベルを20%未満に改善・維持することも必要不可欠です。また中等度~重度歯周炎患者の治療には長期間を要しますので、開始に際しましては、適切な患者選択とそれなりの覚悟が必要です。歯周基本治療後には適切な再評価をもとに、次のステップ(歯周外科)へ進むことになります。歯周外科手術にも、それぞれの目的に応じた手術が存在しますので、指針を参考に適宜選択する必要があります。また歯周病が重度になればなるほど抜歯、抜髄が必要となりますが、それぞれの基準化は大変困難で、抜髄に関しては、各症例の各歯の条件(根分岐部病変,予測される知覚過敏,固定他)等を的確に把握することも求められると思います。中等度~重度歯周炎患者の治療で最も重要なことは、日頃から中等度以上に進行した歯周病患者さんの保存経験を積むことだと思います。これまでの保存経験が、結果的に次の難症例の保存につながりますので、保存レベルのハードルを徐々に高くするためには、良い患者さんとの出会いを決して見逃さないように努めることも重要であると思います。





>>過去の学術研修会リストへ


>>トップページへ