過去の学術研修会ー第43回学術研修会講演会事後抄録ー


講師:寺内 吉継先生
(・神奈川県大和市開業
  ・医療法人社団 インテリデン
  トCT&米国式根管治療
  センター 理事長
 ・東京医科歯科大学
  大学院 非常勤講師
 ・日本顕微鏡歯科学会
  指導医
 ・社会医療科学講座
  口腔保健学准教授)

グローバルスタンダードのハイエンドを知る

最初は日本における歯科医師の現状、他国と比較しての日本の歯科医師の位置、収入などの比較の話から講演は始まりました。
本題にはいると、Endoの成功率を上げるには正確な診査、診断が基本で感染(細菌)の除去と防御に尽きる。、言うこと。
1診査、診断について。
 最初に痛みの特徴について
 痛みは筋肉系、神経系、血管系に分類される。
  1筋肉系:鈍痛、うずき、重い感じ
  2神経系(歯髄):ぴりぴり感、ひりひり、じんじん感(電気的)
  3血管系(炎症等):ずきずき感、どくどく感(鼓動的)

肩から上で感じる痛みの9割が筋肉にある。と、言われている。

Heteropic Pain(異所性痛)
痛みを感じる場所に麻酔や処置をしても痛みの程度に変化なし。
1Referred:痛みの原因の部位を支配している中枢神経が同神経支配下にある別の場所で感じる痛み。
2Central Pain:中枢神経に痛みの原因があり、その神経支配下の部位で感じる痛み。
3Projected Pain:痛みの原因部位にある神経の投影線上で感じる痛み。
痛みを伝える神経繊維
1A-Beta Fibers:軽度の触覚、圧覚を伝える。太い有梢の神経繊維で伝達速度は速い。歯根膜に多く分布している。
2A-Delta Fibers:歯髄の外側に位置し象牙細管に入り機械的刺激に反応。細い有梢の神経繊維で伝達速度が速い(12-30m/s)。象牙細管内溶液の動きに反応し痛みを伝達。ピリッとした一過性の痛み。EPTに反応。
3C fibers:細い無梢の神経繊維で伝達速度が遅い(0.5-2m/s)。歯髄の中枢に位置。機械的、温度、化学的刺激に反応。歯髄内の強い刺激に反応し痛みを伝達。ヒリヒリ、ジーンとした持続的な痛みで、Referred painの主な原因。歯髄炎の主な痛み。EPTに反応しない。
一晩中痛かった、冷たいものは大丈夫だが熱いものはしみる。痛みが長く続くものはC fibersがやられてるので抜髄しないといけない。

痛みに対する脳の反応には1痛覚過敏(域値低下)2関連痛 が起こる。
そうすることにより、痛みを伝える。

自律神経失調症とは、交感神経が高い状態が続き、筋肉が緊張し、歯が痛いと感じることがある。自律神経の節後繊維はC繊維である。自律神経失調症の症状は舌や顎関節、咀嚼筋などの体の一部が痛くなったり具合が悪くなったり、精神的に落ち込むなど様々。いくつか重なって症状が現れたり、症状が出たりでなかったりする。患者さんが歯痛を訴えても処置してはいけないこともある
歯に感じる痛みの原因
歯原性:
1歯の冷、温痛②顕著な打診痛(歯根膜への炎症)
A-Delta fiberとCfiberが関与‥被疑歯に局所麻酔で痛みが消失。
非歯原性:
顎関節、狭心症、脳腫瘍、筋肉、自律神経などが歯の痛みとして感じる。
C fiberが関与‥いたみを感じる歯に局所麻酔しても痛みは消失しない。
1Access Cavity Preparation
 診査、診断で抜髄が必要になりカリエス、修復物、補綴物を除去したあとAccess Cavity
 Preparationになります。
 Access Cavity Preparationは歯髄腔へ穿孔、髄腔開拡、根管孔明示。
 大事なことは根管数と根管孔の位置を把握すること、講演では詳しく説明してくださいましたが
 、寺内先生の著者『How to Endodontics The State of the art』クインテッセンス出版を診療の
 参考にしてください。
 下顎小臼歯や下顎前歯の2根管の症例を図や動画を用いて説明されました。
 歯内療法で保存的に歯を残すため、なるべく健全な歯質を削らないために、根管の数と位置を把
 握するためにCTは有効である。
2髄腔開拡時、余計に削らないために寺内先生はLA AXXESS BURと言う先端にダイヤモンドのつ
 いていないバーを使用しているそうです。
3根管形成=穿通+根管拡大+根管洗浄
穿通は♯8~15のステンレスファイルを使っている。なぜ♯8~15かと言うと、統計上根尖孔の最大径は0.13㎜だからである。
穿通したら♯15まではステンレスの手用ファイルを使って、♯15まで拡大してそれからはNi Ti ファイルを使う。
♯15が入らないときは♯10を50回程ファイリングする。ステンレスは腰があるので、回転させずに入れる。最初から♯15を使うと腰が強く湾曲根の場合、まっすぐ穿孔してしまうこともあるので、最初は♯10以下で。
根管の上部(歯冠側)が細くそこにファイルがあたり根尖まで到達しない時は太いファイルで上部(歯冠側)の拡大から行うと良い。
根管形成(拡大)
根管形成はNiTiファイルで行っている。
ゆえに寺内先生の診療室には♯20以上のステンレスファイルは置いていないそうです。
そのような手順をきちんと行うとたとえ90度根尖で湾曲している根もきちんとした根管充填まで出来るそうです。
一番のポイントは自費治療で行うことだそうです。きちんとした治療のもとにきちんと報酬を貰うことできちんとした治療ができる。そうです。
根管形成の説明はNiTiファイルの説明でした。
NiTiファイルの共通点はすべてテーパーがついていること。
最初のNiTiファイルはブキャナン先生の開発した、NiTi Greater Taper
(GT)Filesで、これは初めからフレアー状のテーパー形態になっていて、先端が♯20で一番根元の太い部分で♯100になっていて、一本のファイルで根管形成ができる。

NiTiファイル特性に影響する因子
1オーステナイト
室温で硬いNiTiファイルの成分
2マルテンサイト
延展性があり柔らかい。たいていのNiTiファイル内に微小量が室温で認められる。形状記憶がある。
3R相
延展性、弾性領域が広くストレスが少ない。プレマルテンサイト相とも呼ばれ応力や熱処理により生じる。形状記憶もある。
4切削加工(ねじれに弱い)ねじれ加工(ねじれ易い)
NiTiファイルの破折について
○NiTiファイルは1-5%の頻度で破折していてSS(ステンレススチール)手用ファイルと比較すると5~7倍の頻度で破折している。
○超弾性NiTiファイルは永久変形するまでの限界が高いがSS手用ファイルより数倍弱い力で破折する。
○NiTiファイルの切削力は一回使用で50%低下し、耐ねじれ疲労も落ちる。
根管形成と充填
従来のいわゆる保険の治療がステップバック法+側方加圧充填ですが、この方法は根尖側からいじっていくので、削片が詰まりやすい、ファイルが破折しやすい、密な根充が出来ないと言う問題点があり、ならばステップバック法で根管形成するならシーラーとシングルのGPポイントを用いた、ステップバック法+シングルポイント充填をお勧めします。
やはりお勧めはクラウンダウン法+Continuous Wave充填。これは、NiTi rotary ファイルで根管形成したサイズのGP+シーラーを挿入して200度のSystem B
Pluggerで熱する。これは根尖部分の側枝も閉鎖することができる。
根管内洗浄
感染根管にBiofilmを形成するやっかいな症例がある。
Biofilm
・Exopolysaccharide(ESP:菌体外多糖類)の有無・微生物集合体(長期間の感染で生じる)
・バイオフィルムは浮遊菌と比べ抗生物質に対して1000倍の抵抗力がある。
・CHXに対しては300倍の抵抗力。
・3mixなどに対しても同様な傾向があった。
基本的にバイオフィルムは外科的に機械的にではないと除去できない。根管内の洗浄は何を使っているか?NaOClは温度と時間に比例した殺菌力があります。
6%濃度、1分で4割、3分で6割
2%濃度、それぞれ2.8割、3.5割を殺菌。
日本ではまだ売られてないそうですが、QMixと言う薬剤は6%NaOClと同じ殺菌効果でMTADよりバイオフィルムの除去効果が高く、17%EDTAと同様のスメアー層除去力をもつ。水酸化カルシウムをCHXで練って使用するのもバイオフィルムに効果があるそうです。
根管内の洗浄は何を使っているか?手用シリンジでは根尖付近までは届かず、洗浄効果も悪いのでPiezo Flow という超音波洗浄を使用している。
超音波洗浄を1分間使用すると80%が無菌化、対して手用シリンジでは27%。
ではどうしたら100%無菌化できるのか?
このような論文があったそうです。
・根尖孔を♯45まで広げたら根管を62%無菌化することができた。
・根尖孔を♯55まで広げたら根管を89%無菌化することができた。
・根尖孔を♯60まで広げたら根管を100%無菌化することができた。
あまり削ると破折の心配もあるが、どうしても排膿がとまらないときは試してみてください。
根尖までGPが到達しても治癒しないケース
・Coronal leakage
・細菌増殖可能な栄養源や感染の残存(未処置根管の存在)
・歯根破折
・GPの感染
・根尖孔外の感染(バイオフィルム)

逆に根尖までGPが到達してなくても、無菌が保たれていれば治癒しているケースになる。

根管充填の時期は?
1回法 VS 複数回法
・複数回法の方が1回法よりも殺菌率が若干上回っている。
・抜髄なら1回法で根管充填までおこなうべきである。
・感染根管処置をより確実におこなうのであれば2.3回通院させてじっくりと時間をかけて無菌状態にしてから根管充填すべきである。それ以上は無意味である。
・加熱タイプの垂直加圧根管充填法がよい。
・複数回法の場合、仮封は十分な長さをとりしっかり詰めるべきである。
MTAとは根管充填セメントです。
MTAの封鎖性は初期硬化時は膨張による機械的封鎖(数週間)。象牙質とMTA間にアパタイト結晶が生じて化学的に接着する。粉液比にかかわらず膨張する。
MTAはCaイオンを放出し組織液(リン酸緩衝生理食塩水)からのリン酸と結合しリン酸カルシウムが生じHAの形成を促進。これが象牙質とMTA上に中間層(FL)として作られ、MTAと象牙質をつなぎとめる。
MTAを根管充填すると
・骨誘導とセメント質誘導
・GPと比べ経時的に耐歯根破折性が高くなる
・重度の感染根管でも効果的に細菌を封じ込め、不活性化する
・硬化後でもpH12.5(3H)あり細菌の増殖を抑制pH9.5(1W)
・圧縮強さ24時間で40MPa、21日後でも67MPa
・大きな根尖病巣があり難治性の感染根管で用いると治癒する傾向がある
・外科処置と比較して侵襲性も少なく治癒速度が速いことが多い
・再根治時の除去性が悪い以外は全て理想的な根管充填材の特性を満たしている
歯根破折
・根管治療した歯にクラウンを装着しない歯は装着した歯よりも6倍も短命だった(垂直性歯根破折を起こした)
・第二大臼歯は他の歯と比べ10年予後の破折率は有意に高かった。
・近心と遠心の両方にコンタクトポイントがある歯は単独歯や片方しかない歯と比較して有意に耐破折性が高かった。

歯根破折の原因
1:非エンド由来
・隣接歯の抜歯
・長い鋳造ポスト
・失活歯のインレーやCR充填
・ブラキシズム
・咬合性外傷
2:エンド由来
・過度な根管充填圧
・過度な根管形成圧
・過度な根管壁の切削

歯根破折対策
Ferrule(帯環効果)はコア部とクラウン部の両方で得られれば最大限の効果を発揮できる。
Ferruleは2ミリ以上あればコアの長さには影響しない。

破折器具の統計
・術前に根尖病変があり破折器具を放置した場合は治療予後は有意に悪くなる。
・破折器具の分類:NiTi file 78.1%、手用ファイル5.9%
・破折頻度は3.3%

破折器具の除去では現在超音波チップが最も効率良く除去できる方法。
講演会では、チップ、バー、ループを用いて華麗に湾曲根尖に残った破折したファイルの先端を次々に除去していく様子を動画を用いた説明をしてくださいました。
まさに寺内先生にかかれば除去できない破折ファイルはナシという印象でした。

GPを除去する理由
1自体の感染
2Biofilmの除去のため。
(フィン、イスムス、側枝、未処置根管、ファイル非接触根管、根尖孔外など)

GP除去対処方法
GPの除去
まずは機械的に除去(超音波+ΕGRR)1ミリ程残ったら化学的除去(クロロホルムで溶かす)

(学術研修部 22期 白倉義之・記)



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ランチョンセミナー


講師:佐藤 和朗先生
(岩手医科大学歯学部
 口腔保健育成講座
 歯科矯正学分野特任講師)


歯科医療からみた睡眠時無呼吸症候群

 睡眠時の気道閉塞が原因とされる閉塞型睡眠時無呼低呼吸症候群(OSAHS)は成人の約3%が罹患しているといわれており、その治療法のひとつとして、歯科では下顎を前方に誘導し、気道の開大を促す下顎前方誘導装置を適用することがある。岩手医科大学附属病院歯科医療センターでは平成14年から特殊外来として「いびき・歯ぎしり外来」を設立し、現在では矯正歯科といびき・歯ぎしり外来を併設し、睡眠医療科を中心とした医科との協力体制のもと診療と臨床的研究を継続している。
 OSAHS患者では肥満症や循環器系疾患との関わりが指摘されているが、都道府県別の成人肥満者の割合が高い県が東北地方に集中している事や、小児においても東北地方の肥満者頻度が高い事は、今後の患者の実態数や患者予備軍の推定に重要な項目になると考えられる。一方、歯科的な見地からは下顎後退の顎態を有する患者が多いことが特徴である。下顎前方誘導装置(OA)を適用した場合、装置適用前の気道狭窄が強い程、治療効果として気道の開大の効果は得られるが、この効果を術前の顎顔面形態や下顎の移動量からスクリーニングするのは困難であり、装置適用後は治療効果の確認が必要であることなどが解っている。現在OSAHSの保存的治療は持続式陽圧呼吸療法(CPAP)かOAの選択である事を考慮すれば、今後も医科との連携治療を充実させて地域医療に貢献していきたいと考えている。
 さらに当科における矯正臨床では呼吸機能に着目し、OSAHS治療と関連して上顎前突に分類される成長発育期の下顎後退症例において、顎骨の成長発育や矯正治療の効果が気道の形態にどのように影響するのか、また小児の睡眠呼吸に関してどのように関わっているかを臨床的に検討している。この背景は、矯正治療でOSAHS患者予備軍の予防的治療が可能かどうかの検討である。加えて、顎骨の移動を行う外科的矯正治療の適用となる顎変形症患者における手術前後の気道の断面積、容積の変化とそれに伴う無呼吸低呼吸指数の変化について検討している。矯正臨床では呼吸機能に影響を及ぼす治療が行われていると考えており、今後も知見を積み重ねていきたいと考えている。




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