岩手医科大学
歯学部同窓会

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第32回(平成19年11月18日)

「科学的根拠に基づいた予防歯科」ー健康格差の是正を目指してー

花田 信弘先生
花田 信弘 先生

講師:花田 信弘先生
(国立保健医療科学院部長)

 花田先生は岩手医大で助教授をされていたということもあり、本学にはたいへん縁の深い先生であります。「科学的根拠に基づいた予防歯科」というテーマでのお話でした。当日のご講演内容を簡単ですが、以下にまとめます。

・う蝕は慢性持続性感染症である。

通常の感染症は発症している時のみに病原体が検出され、治癒で病原体は体外に排出される。う蝕は長期にわたり(持続的に)病原体が検出されるため、歯をなくしてしまわない限り、生涯コントロールしていくしかない。感染者が発症するかどうかは生活習慣にかかっている。

・慢性持続性感染症
 クラミジア、歯周病菌感染と動脈硬化
 ピロリ菌感染と胃十二指腸潰瘍、胃がん
 C型肝炎ウイルス感染と肝がん
 パピローマウイルス感染と子宮頚がん
 う蝕とミュータンスレンサ球菌感染
 歯周病とグラム陰性桿菌感染
 慢性疲労症候群

・ミュータンス菌感染症の制圧戦略
 感染源除去(PMTCによるバイオフィルム除去)
 感染経路の遮断(知識の普及)
 宿主感受性(平滑面はフッ素、咬合面はシーラント)

・う蝕予防のEBM

フッ素に関しては60年の研究実績、砂糖に関しては50年、ミュータンス菌に関してはたった10年。ミュータンス菌に関するヒトを対象とした疫学的調査、エビデンスは2000年以降に集中する。だから、2000年以前に卒業した先生はミュータンス菌のことを正しく知らない場合が多い。

・子供において唾液中のミュータンス菌量が多いとう蝕になりやすいというデータ。

・母親のミュータンス菌量が多いとその子供はう蝕になりやすいというデータ。

これは、母親のミュータンス菌量が増加するような環境で育てられた子供はう蝕になりやすいと解釈するべき。

・最近のペプシは砂糖ではないからグルカンは形成されない、ハチミツでもグルカンは形成されないので、バイオフィルムはできない。

・ストレプトコッカス・ミティスは口腔常在菌だが、これを高齢になるまで育てることが重要で、それが我々歯科医師の役目である。ミティスは無害だが抗生物質で簡単に死んでしまう。ソブリヌス、ミュータンス菌はバイオフィルムを形成し抗生物質では死なないので小児期に抗生物質を投与されるとミュータンス菌だらけになってしまう。

・赤ちゃんの口の中の細菌は9割が常在菌のミティス。このミティスがいないとカビがはえてくる。ミティスが他の菌の進入を妨げている。ミティスを定着させることが大切。

・縄文時代に乳歯う蝕は1本もなかったというエビデンスがある。

明治以前はカリエスは成人に起こるもの(根面う蝕)だった。

・ネアンデルタール人は259本の歯がみつかっているがう蝕は1本もない。

石器時代になって農耕が始まってからう蝕は起きるようになった。

・古代のう蝕は生活習慣によるものといえるが、現代の小児う蝕はミュータンス菌の感染症であるといえる。

・ミティス菌は砂糖を与えてもグルカンを生成せず、バイオフィルムはつくらない。

ミュータンス菌は砂糖を与えるとグルカンを生成し、バイオフィルムをつくる。

・バイオフィルムをつくるとエナメルの硬さが落ちる。

・第1大臼歯が萌出した時にミュータンス菌がない状態であれば、咬合面はミティス菌が覆い、ミティス菌が天然のシーラントの役目をしてくれる。

・母親に徹底したPMTCなどを行うことにより子供に対する感染率が半分になるというデータがある。

・歯みがきではバイオフィルムの周りのプラークのみが落ち、バイオフィルムは落ちないので、う蝕に歯みがきは無効。

・ところがバイオフィルムの周りのプラークを落とすことはぺリオには有効。

・カリオロジーの専門家は歯みがきは無効といい、ぺリオの専門家は歯みがきは有効というので混乱が生じている。

・ミュータンス菌の感染は生後19?31ヶ月

・感染経路は51.4%が母親、31.4%が父親

・夫婦間の一致が少ないことから感染力は弱いといえる。

・縄文時代の人骨に歯周病あるのでう蝕より古い疾患

・たばこと飲酒と歯周病にエビデンスがでてきている。

・感染経路がう蝕とはちがい、水平感染である。ジンジバリス(P.g菌)は配偶者間で30?75%一致し、ミュータンス菌は配偶者間では一致しないのとは逆である。

・若年性歯周炎の原因菌であるアクチノマイセテムコミタンス(A.a.菌)は親子感染も配偶者感染も両方ある。

・歯周病菌はヘム鉄を求めて組織に侵入する細菌であり、最終的な標的細胞は全身の血管である。循環器疾患と歯周病の関連は細菌学的には当然のことである。

・歯肉炎であっても長期に炎症が持続するとヘミデスモゾーム結合の破壊がダウングロースし、回復不能なダメージを与える。歯肉炎は回復可能と習ったが、歯肉炎も持続すると回復不可能になることがわかっている。

・ポケットができてからでは遅すぎる。

・対策として異常な炎症が起きていることを知るため、だ液のマーカーである遊離ヘモグロビン(LDH)を検査で調べる。岩手県歯科医師会と共同で企画中。

・糖尿病と高血圧症は病気ではなく検査数値異常であり(サロゲート)、真の疾患は循環器疾患、合併症である(エンドポイント)。エンドポイントになってしまうと、もう治せないので数値異常の段階で薬をだす。歯周炎もポケットができてからでは遅すぎる、う蝕もう窩ができてからでは遅すぎる。だ液検査で数値異常の段階で手を打つべき。

・今までのだ液検査は口の中に細菌がいるぞとおどかし、歯みがきをしてもらうためのものだった。現在ではBMLとGCで全国どの歯科医院でも検査が可能。

・口腔常在菌の中での原因菌の比率が重要であって、単純な原因菌の細菌数は重要ではない。ミュータンス菌はBMLで比率を検査できる。

・歯周病の場合でも3DSは有効。

・アメリカでも3DSのシステムがPerioProtectとして広まりつつある。サイトをみると地区ごとにPerioProtectシステム対応の歯科医院を紹介している。

・神奈川武内先生の3DSの実例とデータ:物理的なコントロールに加え、化学的なコントロールでP.g.菌が検出限界以下になる。そして、それを生涯続けることが大切である。

・学ばないとわからない歯の健康の目的と対象臓器
 1)口腔機能訓練(障害を受けた脳)
 2)健康づくり(栄養器)
 3)感染防御(循環器、消化器、呼吸器)
 4)8020(顎骨)

・2002JDR咀嚼と脳:噛むことによって脳血流量が増加するというデータ。

・咀嚼はリバウンドしない唯一のやせ方:一口30回かむ。

・有床義歯は口腔機能を向上させていないというデータ。

・硬い物を食べられるお年寄りの方が活動能力が高いというデータ。

・歯周病の標的は循環器であり歯周病は動脈硬化や心臓発作、脳卒中のリスクを6?7倍にする。

・口腔はピロリ菌の貯蔵庫:ピロリ菌がデンタルプラークに34.1%。

・歯周病がすい臓ガンのリスクを1.64倍増加させる。

・6024者率と8020者率:地方に住む女性の残存歯が少ないというデータ。

・歯があることによって顎骨が残る。

・老化には非常に大きな個人差があり、個人差には歯の健康が関係している。

・これからの歯科医はプライマリーケア医である。

(学術研修部会 21期 古町瑞郎)

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大平 明範先生
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