岩手医科大学
歯学部同窓会

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第39回(平成22年11月28日)

歯周外科治療の臨床応用ーフラップ手術からインプラント治療までー

申 基テツ先生
申 基テツ 先生

講師:申 基テツ先生
(明海大学歯学部 口腔再生医工学講座 歯周病学分野 教授)

 ご講演は、中等度以上の歯周病患者に対する歯周外科的対応、ならびに歯周病患者に対するインプラント治療の2つのセクションに分けてお話頂きました。全体を通して、適切な患者教育とメインテナンスの重要性を強調されており、そのために審美領域への対応や咬合機能の十分な回復、清掃性への対応が不可欠であることを述べられていました.以下にその要点を挙げます。

1、歯周治療の目的

1. 炎症の除去
2. 歯周ポケットや骨欠損の除去
3. プラークコントロールの用意な口腔環境の整備
4. 歯周疾患再発予防のための患者教育
 感染源の除去が原則であり、さらに患者教育が最も重要である。歯周病の進行速度(歯周組織の破壊)は個体差があり、病態が進行したケースでは、原因除去療法や通常の補綴方法では対応できず、歯周外科的対応さらにはインプント治療も有効となる。

2、歯周ポケット除去を目的としたフラップ手術

切除療法と再生療法の二つに分類される。どちらを選択するかは、
・支持骨の切除量
・骨内欠損の形態と大きさ
・処置後の歯冠・歯根比
・術後の審美性
・術者のスキル(予知性の高さ)
・費用
を考慮して決定する。

3、フラップデザインの分類

 フラップデザインは以下の3つの要素によって構成され、これらを患者の状態に応じて選択していく(フラップマネジメント)。
・フラップを剥離したときの骨露出の有無による分類
 全層弁?骨の処置が必要な場合に用いる。術後に骨吸収が生じるため、骨が薄い場合は歯根露出を生じるため適応には注意が必要。
 部分層弁?骨欠損が無い場合や骨形態を修正する必要ない場合に用いる。テクニック的に困難であるため、適応には歯肉の厚みに左右される。
・術後のフラップの位置による分類
 非移動弁?フラップを元の位置に戻す。改良型ウィドマン法に代表され、厳密にはポケット除去術ではなく、明視野と器具の到達性を得るためだけであり、アクセスフラップとも呼ばれる。
 移動弁?フラップを根尖側、歯冠側もしくは側方に移動する。
 移動する方向によって術式の性質が変わってくる。
・歯間乳頭の保存による分類
 通常のフラップ?歯肉を頬側と舌側に切り分けるため、審美性を考慮する上で重要な歯間乳頭が切除される。
 歯間乳頭保存型フラップ

4、フラップデザインの適応基準

1. 歯周ポケットの深さ(歯周ポケット底部BPの位置)
2. 非可動性角化組織の有無(歯肉歯槽粘膜境MGJの位置)
3. BPとMGJの位置関係
4. 審美的配慮の有無
 BPより根尖側にMGJがある場合、BPと同じ高さにある歯肉外面から内斜切開(一次切開)を根尖方向に加え、次に歯肉溝切開(二次切開)を加えてから歯間部に水平切開(三次切開)を行う。これにより短いフラップが作製され、フラップを戻すと先端が骨頂部の高さに適合し、歯周ポケットの除去ができる。
 BPがMGJを超えている場合、歯肉弁根尖側移動術が適応であり、歯肉辺縁から0.5?1.0mm離れたところに内斜切開(一次切開)を加え、できるだけ角化歯肉を温存する。
次に歯肉溝切開(二次切開)を加える。フラップは骨欠損がある場合は全層弁とするが、基本的に部分層弁とし、フラップの先端を骨頂部など術者の意図した位置に移動させて縫合する。

5、歯周病患者へのインプラント治療の意義

1. 口腔機能の回復 違和感のない固定性補綴
2. 残存歯や周囲歯周組織の保全 残存歯への負担軽減,咬合関係の改善
3. 可能な限りの審美改善
4. 矯正治療のための固定源(インプラントアンカー)

6、歯周病患者におけるインプラント治療に対するリスクとその対応

1. 歯周病罹患歯からインプラントへの交叉感染
 →歯周ポケット内細菌叢の改善
2. プラークコントロール悪化の可能性
 →歯周ポケットの減少と骨内欠損の除去、継続的なメインテナンス
3. 歯冠歯根比の悪化(インプラントへの負担過重)
 →咬合の安定化
4. 清掃性や審美性の低下
 →骨や歯肉歯槽粘膜に起因した問題の改善

(学術研修部 16期 遠藤義樹)


ランチョンセミナー

CAD/CAMを用いたオールセラミッククラウンの製作法

大平 千之先生
大平 千之 先生

講師:大平 千之先生
(岩手医大歯学部 歯科補綴学講座 冠橋義歯補綴学分野 助教)

 近年、価値観の多様化する社会のニーズに応えるべく審美性を重視した治療法の選択肢が拡がっている。外観に触れる前歯、小臼歯のみならず、大臼歯においても金属色を用いることに対して患者さんが抵抗感を示す傾向が強くなっており、歯冠補綴あるいは欠損歯列の補綴において、オールセラミッククラウンが自然観のある天然歯の色調構築に加え、十分な機械的強度を有する補綴装置として定着し、応用範囲も拡大されている。

 1990年代に入り登場したオールセラミッククラウンの主な製作法としては、耐火模型法,鋳造法(Castable)、加熱加圧成型法、CAD/CAM(Computer Aided Design/Computer Aided Manufactuaring)が挙げられる。

 近年、オールセラミッククラウンの応用範囲の拡がりと共に技工操作に要する時間の短縮化、製作過程の簡略化が望まれ、各種製作法のなかでCAD/CAMシステムが浸透しつつある。

 CAD/CAMシステムは、コンピューター支援による設計・製作システムであり、歯科分野では80年代後半から補綴装置の作製に用いられている。また、既製のセラミックブロックを用いることにより安定した物性が得られ、加熱によるセラミックの変形が少ないことが特徴といえる。

 実際の製作は、支台歯の計測から開始される。計測方法には、支台形態ならびに周囲歯列の形状データを作業模型から得る方法と口腔内を直接光学印象する方法がある。作業模型からデータを採得する方法では、タッチプローブを用いる接触方式とCCD、レーザーを利用した非接触方式がある。タッチプローブを用いる接触方式では、精密な計測が可能であるが、計測時間やプローブ先端の形状で歯頸部辺縁の測定が困難な場合がある。一方,CCDとレーザーを利用した非接触方式は、高速で支台歯を計測することが可能であり、現在多くの装置で採用されている。

設計に際しては、数値化された支台歯および隣在歯の計測データをもとに、コンピューター上で設計される。

 設計データを元にCAM部で行う加工法には、セラミックコーピングを製作後、コーピング上に歯冠色セラミックを築成・焼成し色調構築を行う方法(コーピング型)とセラミックブロックを切削・加工し歯冠形態までを完成させる方法(クラウン型)の2通りの方法がある。いずれの方法も、製作過程を短縮化することが可能であるが、オールセラミッククラウンを合理的に生体に調和させるシステムとしては、クラウン型CAD/CAMが有効であると考えられる。

 また、歯冠色はセラミックブロックの色調に依存するため、歯列に調和した色調を構築するためにはセラミックブロック本体が天然歯と近似した色調を有することが重要であり、セラミックブロックやレジンセメントの選択等のカラーマネージメントが重要である。

 近年、測色装置の精度および操作性の向上により口腔内という特殊な環境においても半透明体である歯冠の微小部位を精度よく測色することが可能となっている。今後、色彩情報の評価・伝達・構築を客観的、迅速、かつ正確に実践するためには、測色装置を用い色調を定量化することが必須となることが考えられる。

(演者自抄 28期 大平千之)