岩手医科大学
歯学部同窓会

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第75回(令和5年12月10日)

午前の部・午後の部

長期予後を目指した欠損補綴 診査・診断、治療計画

講師:吉田 拓志先生

日本顎咬合学会(指導医 関東甲信越支部支部長)
日本歯周病学会(認定医)
スタディーグループ赤坂会 幹部
よしだ歯科クリニック 院長

吉田 拓志
吉田 拓志先生

はじめに

 近年、さまざまな治療技術の発展により、患者に提供できる治療方法も変わり続けている。とくに、インプラント治療の応用によって、治療計画の幅が広がることとなったが、逆に 治療の選択に多くの混乱を招くことになった。
 長期的に安定した治療結果を導き出すためには、「なぜ、このような状態になったのか?」を知ることである。そのためには、適切な基礎資料をいかに集められるかが重要となる。
 その後、採得された資料を照らし合わせ、問題点を抽出し、プロブレムリストを作成、それを解決することを治療目標とし、治療計画を立案する。
 ただし複雑なケースにおいては、画一的な診査、診断治療計画ではなく、各々の患者特有の個体差が病態にどのように影響しているのかを診断し、治療を行わなければならない。
 そして、その診断に基づき、歯周治療、歯内治療、修復治療、インプラント治療、矯正治療といった、必要な治療手段を効果的に組み合わせて治療に当たらなければならない。もちろん、それぞれの手段が基本に忠実に実施されなければ病態を改善することはない。
 今回、症例を掲示しながら、欠損補綴症例の予後を中心にお話しさせて頂いた。

パーシャルデンチャーの予後

 私はDr.クラトビルの考えに基づいた、あるいはそれに準じたパーシャルデンチャーの設計を臨床に取り入れているが、そのなかで特に重要と考えていることを以下に述べる。

①片側処理をしない

なるべく両側性の設計を心がけている。反対側が一歯欠損でブリッジにより処理できる場合でもモディフィケーションスペースとして積極的に義歯の設計に取り込む。

②残存歯に適切な前処置をおこなう。

鉤歯となる歯牙を歯冠修復する際、レストシート、ガイドプレーン、マイナーコネクター走行部を適切に形成する。(図1)

パーシャルデンチャーの予後
(図1)

③ガイドプレーンはできるだけ多くの面を設ける。

前後左右的に安定した義歯を装着するために、ガイドプレーンはできるだけ多く設置するようにしている。また。ガイドプレーンの方向を工夫することでさらに水平的に安定する。

④間接維持装置を設置する。

義歯の安定に、クラスプ等の直接維持装置はさほど重要と考えていない。 ただ、間接維持装置としてのレストは鉤間線を考え設置するようにする。

フルデンチャー&オーバーデンチャーの予後

 長期的な義歯の維持・安定において重要なのは、適切な顎間関係と考えている。補綴物製作過程で、適切な顎位を与える為に治療義歯で必ず咬合の安定を確認し、最終義歯製作時には、ステップに分けて咬合採得を行い、特に最後の完成義歯を用いたゴシック・アーチ・トレーシングは、より正確なチェックバイトと中心位を採得できる。
 このような工程で製作された義歯は口腔内での咬合調整はほとんど不要である。
 また、与える咬合様式も重要で、バイラテラル・バランスド・オクルージョン(両側性均衡咬合)を与えることにより、機能時に義歯の動きが少ないことが長期的な顎堤へ負担の軽減になり、結果顎堤の保全へと働く。
 しかし、どんなに素晴らしい総義歯を装着しても経年的な顎堤吸収という生物学的代償(生物学的コスト)を避けることはできない。
 もし50代で無歯顎になり、平均寿命を考えても30年間総義歯を使えば、顎堤の吸収は大きく、かなりの難症例になってしまう(特に下顎)。
 それ故、若年者(ここでは無歯顎になるのは早いという意味)の無歯顎症例では、予後に不安のある歯でも根面板として積極的に残し、必要があればインプラントを追加することにより、顎堤の長期保全を図るようにしている。

ペリオインプラント症例を通して診査・診断、プロブレムリストの作成、治療計画、治療経過、トラブルシューティング

 今回、他にも多数症例を提示させていただいたが、メインとなった1症例をここに提示する。

患者
60歳男性
初診
左上奥歯が痛む。歯周病が気になる。
口腔内所見
全顎的にプラークコントロールは不良で、辺縁歯肉が発赤腫脹し、特に上顎臼歯部口蓋側で著明に認めた。正中離開をしている上顎前歯は以前閉じていたが、ここ数年で開いてきたとのことだった。また、修復されている歯牙は多くなく、カリエスリスクは低いと感じた。
26の欠損をしばらく放置していたせいか、27が近心傾斜した状態で補綴されていた。

(図2~6)

問題点の抽出

①歯・歯列弓

フレアーアウトにより、上顎前歯に正中離解を生じ、審美的な問題を生じている。24も唇側方向に移動し、病的歯の移動を認めた。また臼歯部を中心に咬合平面は乱れている。

②歯周組織

多数歯に4㎜以上の歯周ポケットが存在し、最も深い部位は24で9㎜を認め支持骨の量から2次性咬合性外傷を起こしていると診断した。37、47にも垂直的な骨欠損を伴う深い歯周ポケットを認め、こちらへもアプローチが必要と考えた。主たる原因はプラークコントロール不良による炎症であるが、咬合による「力」の問題もかかわっていると考えられる。(図7,8)

③咬合

犬歯の咬耗、フレアーアウトにより、適正なアンテリアガイダンスが失われている。(図9)また、大臼歯を中心に咬頭干渉を認める。 現状の咬合は臼歯部の歯周組織の破壊にも関与しており、生理的許容範囲を超えた病的咬合と診断した。ただし、顎機能検査により、顎関節には問題を認めず、再現性のある顎位である中心位は安定しており、治療顎位として用いることに問題はないと考えられた。

④顔貌と歯の関係

左上1近心の位置に顔貌の正中がある。
上顎前歯の切縁位置はフレアーアウトにより若干突出している。(図10)

診断

 本症例は 27 を抜歯後、しばらく放置したことにより 近心傾斜を起こすとともに対合歯は挺出し、スピーの彎曲は強くなった。
 その結果左側臼歯部に咬頭干渉を生じるようになった。また、右側も同様にう蝕を放置したことにより左側と同じような環境となった。
 その後パラファンクションにより犬歯に咬耗と位置異常を生じ、適切なアンテリアガイダンスを失うことになり、第一小臼歯がガイドに参加することで顕著な骨欠損を生じたと考える。
 また、この咬合状態で不適切な修復治療を行った結果、 特に上顎の大臼歯に外傷性咬合が加わり、歯周炎の進行が起こったと診断した.
 そのため、まず適切なアンテリアガイダンスの回復が この症例では必須と考えられた。
 また,スピーの彎曲が強くなり、咬頭干渉を起こしやすくなった大臼歯部は修復処置により平坦化することとした。欠損となる上顎大臼歯にはインプラント治療により適正なバーティカル・ストップをあたえようと考えた。(図11)

治療計画

 徹底した歯周基本治療を行い、24、37、47には歯周組織再生療法を用い歯周組織の改善を行う。
 欠損となる上顎大臼歯には受圧条件を変えるためインプラント治療を行い、より適正なバーティカル・ストップをあたえる。
 また、下顎大臼歯は補綴することで適正な咬合接触(クロージャーストッパー・イコライザー、ABCコンタクト)付与することができる。
 咬耗した犬歯は補綴することで適正なアンテリアガイダンスを確立する。
 フレアーアウトしている上顎前歯部には部分矯正により機能と審美性の回復を行う。

初診時口腔内写真(図2~6)

 全顎的にプラークコントロールは不良で、辺縁歯肉が発赤腫脹し、特に上顎臼歯部口蓋側で著明に認めた。正中離開をしている上顎前歯は以前閉じていたが、ここ数年で開いてきたとのことだった。また、修復されている歯牙は多くなく、カリエスリスクは低いと感じた。
 26の欠損をしばらく放置していたせいか、27が近心傾斜した状態で補綴されていた。

初診時デンタルX線写真(図7)

 37,47では歯根長の1/2に、24では2/3におよぶ骨吸収を認め、16,17,27では根尖付近におよぶ骨吸収を認めた。

初診時デンタルX線写真(図7)
初診時デンタルX線写真(図7)

初診時プロービングチャート(図8)

 多数歯に4㎜以上の歯周ポケットが存在し、最も深い部位は24で9㎜を認め、36,37,46,47 にはⅠ度、16,17にはⅡ度の根分岐部病変が存在した。

初診時プロービングチャート(図8)
初診時プロービングチャート(図8)

前歯のカップリングの状態
(図9)

上顎犬歯部には著しいファセットが存在し、上顎前歯部にはコンタクトの消失を認めた。

前歯のカップリングの状態(図9)

左上1近心の位置に顔貌の正中がある(図10)

上顎前歯の切縁位置はフレアーアウトにより若干突出している。

左上1近心の位置に顔貌の正中がある

診断用ワックスアップ
(図11)

診断用ワックスアップ(図11)

 咬耗によりアンテリアガイダンスを失った犬歯と、咬合平面の乱れていた臼歯部を補綴的に改善することを目標に診断用ワックスアップを製作した。
 フレアーアウトを起こしていた上顎前歯を部分矯正で改善することも同時に確認した。

(図12)

スケーリングルートプレーニング後、再評価時に表面上の炎症は消退したが、深い歯周ポケットが残存したこと、プロービング時にポケット底部から出血を認めたため、#47に歯周組織再生療法を行った。パピラプリザベーションテクニックにて切開し、根面を十分にデブライドメント後、EDTAにて根面処理を行い、エムドゲインを塗布した。その後マットレス縫合に単純縫合を併用して縫合した。

図12

(図13,14)

24も、47同様、歯周組織再生療法を行った。隣接面から口蓋側に及ぶ3壁性の深く広い骨欠損形態をしていたため、骨移植材を併用した。

図13
図14

プロビジョナルレストレーションの咬合接触状態(図15、16)

最終的な形態を考えたプロビジョナルレストレーションを装着し、咬合と歯周組織の安定を確認した。約3か月間経過観察を行い、特に問題は認めなかった。
咬合様式はディスクルージョンで、咬合接触も良好に得られていることが確認できる。

プロビジョナルレストレーションの咬合接触状態
プロビジョナルレストレーションの咬合接触状態

再評価時口腔内写真(図17、18)

炎症のコントロールができていることを確認できる。

再評価時口腔内写真(図17、18)
再評価時口腔内写真(図17、18)

最終補綴装置装着時口腔内写真(図19~21)

最終補綴装置装着時口腔内写真(図19~21)
最終補綴装置装着時口腔内写真(図19~21)
最終補綴装置装着時口腔内写真(図19~21)

(図22,23)

プロビジョナルレストレーションで得られた咬合様式を移行した。

(図22,23)
(図22,23)

治療終了時プロービングチャート(図24)

治療終了時プロービングチャート
治療終了時プロービングチャート(図24)

治療終了時デンタルX線写真(図25)

治療終了時プロービングチャート(図24)
治療終了時プロービングチャート(図24)

(図26~28)

術後5年、パラファンクションにより犬歯の咬耗を認めたため、レジンビルドアップを行うとともに、夜間のナイトガードの使用を指示した。

図26~28
図26~28
図26~28

(図29~32)

術後8年経過時に26のインプラント周囲粘膜の炎症を認めた。 上部構造を外すとアバットメントのスクリューが緩んでおり、マイクロスコープ下でインプラントの破折を認めたため、トレフィンバーを用いてインプラントを撤去した。ナイトガードをあまり使っていない時期があったとのことだった。

(図33~38)

インプラント撤去後、再度骨造成を行い、インプラント埋入を行った。
インプラント周囲の角化歯肉の獲得のため軟組織のマネージメントを行い、上部構造を再制作した。

術後14年経過時口腔内写真(図39~41)

インプラントの破折による撤去という大きなトラブルがあったものの、その他は良好に経過している。咬合力のコントロールの重要性を感じた。

術後14年経過時デンタルX線写真(図42)

再生療法を行った部位を含め、骨レベルは安定している。インプラント周囲の骨レベルも問題ない。

術後14年経過時デンタルX線写真(図42)
術後14年経過時デンタルX線写真(図42)

考察

 本症例がある程度予後良好に経過している理由として、上顎大臼歯部に行ったインプラント治療による確実な咬合支持の確立が、残存している支持組織の失われた歯周病罹患歯の保護という観点から有効であったと考えている。また、歯周炎の再発は認めず、プラーク(バイオフィルム)に起因する炎症のコントロールは患者の協力もあり、良好な状態を保っている。
 初診時にパラファンクションを疑う所見があったが、プロビジョナルレストレーション装着時に、摩耗や脱離が見られなかったため、特にナイトガードの必要性が無いと考えたが、患者の置かれた環境の変化によって、再度パラファンクションが起こるリスクを考えておかなければならない。歯周治療における咬合力のコントロールにはいくつかの方法論があるが、その中でもナイトガードは患者が使わなければ意味がない。使わなければ力のトラブルが起きることを伝え、理解させなければならない。
 最後に、インプラントは予知性の高い治療方法ではあるが、今回のようにフィクスチャーの破折を起こした場合は撤去しなければならず、リカバリーに苦慮する。天然歯を残す努力を再度考えさせられた。

ランチョンセミナー

口腔がん治療のいま ~標準治療から最新の治療法について~

講師:大橋 祐生先生

岩手医科大学歯学部口腔顎顔面再建学講座口腔外科学分野 特任准教授
岩手医科大学附属病院頭頸部腫瘍センター センター員

大橋 祐生 先生
大橋 祐生先生

1. 口腔がんについて(おさらい)

 主な症状として、初期では赤い、白いなどの色の変化、びらん、硬結などの表面や内部の変化があるが、痛みに関しては超初期であれば感じないことも多く認める。大きくなると舌の運動障害による構音障害、嚥下障害、咀嚼筋間隙に浸潤すると開口障害を認めるようになる。
 頭頸部がんは全がんの中の3%ほど言われており、口腔がんは頭頸部がんの3分の1であるため、全がんに占める割合は約1%になる。人口10万人あたり6例以下かつ診療上の課題が他に比べて大きい癌は希少がんであるため、口腔がんは希少癌に分類されている。最近の口腔がんの生存率は、5年生存率が約7割と言われており、一昔前の5割から6割程度に比較し、生存率の向上がみられている。

2. 口腔がんの標準治療

 口腔がんの標準治療は手術か放射線治療である。化学療法で根治は期待できない。標準治療とは、十分な科学的根拠に基づき、現在利用できる最良の治療となる。これは世界中の多くの臨床試験結果を専門家によって検証された治療法である。最新の治療という言葉が聞かれることがあるが、最新の治療は標準治療より優れているか検証されていないこともある。最新の治療が最良の治療(=標準治療)ではないこともよくあるため注意が必要である。

3. ガイドサージェリー

 近年、下顎切除と遊離骨皮弁再建におけるオーダーメイド手術(TruMatch®)がDePuySynthes社から提供されるようになった。これは、オンラインでスイスにある提供会社とカンファレンスを行い下顎の切除部位と、切除後の骨皮弁再建のシミュレーションを行い、手術ガイドをオーダーメイドするシステムである。
 コンピューター上で切除ラインを設定し、切除ラインを決めるガイドを作製、さらに再建骨に使用する腓骨の切除、成形用ガイドも作製し下顎再建に使用する専用のチタンプレートも作製する。これをオーダーメイドして、国際便で郵送してもらって手術に臨む手術システムである。

ガイドサージェリー

4. 進行口腔がんに対する新規治療法

 進行口腔がんに対し、これまでは従来型の化学療法や陽子線、重粒子線があり、これらは今日においても適応がある。本セミナーでは、新規に開発された免疫チェックポイント阻害剤、ホウ素中性子捕捉療法、光免疫療法について紹介した。

免疫チェックポイント阻害剤

 切除不能再発遠隔転移口腔がんに適応がある免疫チェックポイント阻害剤はニボルマブとペムブロリズマブである。T細胞には、がん細胞を殺す働きがあるが、がんが進行するとT細胞の働きが弱まり、がん細胞を殺すことができなくなる。T細胞による免疫機能を抑制するレセプターProgrammed Death Receptor 1(以下、PD-1)にがんから発現するPD-1/PD-2抗体が結合すると免疫機能が抑制されることで、がんが増殖する。免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1を物理的に塞いでがん細胞による免疫機能抑制をブロックする薬剤である。これによって免疫機能が活性化してがん細胞を攻撃する状態にする。
 ニボルマブの適応を決めた臨床試験はCheckMate 141試験と呼ばれ、プラチナ製剤不応性(投与後6ヶ月以内)の再発または転移性頭頸部扁平上皮癌に対する有用性を示した。それに対しペムブロリズマブの適応を決めた臨床試験はKEYNOTE-048試験と呼ばれ、それまでの再発または遠隔転移を有する頭頸部扁平上皮癌の一次治療あるいは治療後6ヶ月以降に再発した頭頸部扁平上皮癌に対する標準的な化学療法とペムブロリズマブを比較しペムブロリズマブの有用性を示した試験である。また、ペムブロリズマブは腫瘍におけるCPS(Combined Positive Score)という腫瘍におけるPD-L1発現を免疫染色にて確認することが推奨されている。
 免疫チェックポイント阻害剤は免疫機能の活性を維持する薬剤のため、免疫に関連する副反応が生じることがあることも特徴の一つである。これをirAE(immune-related adverse event)と呼び、全身の臓器に対して自己免疫疾患のような症状が生じることがある。たとえば間質性肺炎、重症筋無力症、1型糖尿病、重症大腸炎などがある。このような副反応に対し重症化した場合は専門科によるサポート体制が整備日されている。免疫チェックポイント阻害剤は、様々ながん種で適応があるため、今後、irAEに悩まされている患者に遭遇する可能性もある。

ホウ素中性子捕捉療法

 Boron Neutron Capture Therapyの頭文字をとってBNCTと呼ぶ。これは、タンパク質合成に必要なホウ素製剤を投与して行う放射線治療の一種である。がん細胞はタンパク質合成が活発なためホウ素を多く取り込む性質があり、そこにホウ素に反応する中性子線を照射してがん細胞を攻撃する。ホウ素から放出される放射線は細胞1個分の距離しか発生しないと言われているため正常細胞は保護されがん細胞のみ攻撃されることになる。

ホウ素中性子捕捉療法

光免疫療法

 口腔がんに多く発現するEGFR(Epidermal Growth Factor Receptor)という上皮成長因子受容体に結合する抗体薬に光感受性物質を組み合わせたアキャルックス®という薬剤を点滴投与して、がん細胞に薬剤が結合した後にがんに直接レーザー光を照射して物理的にがん細胞を破壊するという仕組みである。本治療は、2023年10月から日本口腔腫瘍学会認定の口腔がん専門医を取得した歯科医師が行うことができるようになった。

光免疫療法

5.まとめ

  • 口腔がんの根治を目指した標準治療は、手術か放射線治療である。
  • 3次元的に再現が困難な下顎切除後の骨皮弁再建に用いるガイドサージェリーが開発され、実用化された。
  • 免疫チェックポイント阻害剤の登場によって進行口腔がん治療に対する新たな副反応対策が必要となった。
  • BNCTや光免疫療法によって局所再発・進行口腔がんに対する治療の選択肢が増えた。
  • 口腔がんを取り扱わない歯科医師も口腔がんの新規治療について理解し、適切な支持療法を求められると考えられる。